終電のない電車
日本でいると「終電のない電車」と聞くとトンチのように聞こえるけれど、そうではない。
たとえばNYで地下鉄は24時間稼働だ。複々線という2線路を活用することによって、片方を利用している間に片方はメンテが可能なため、このようなことが実現できている。対して日本はそのような仕組みになっていないので、なかなか難しい。
しかし、それを聞いて「ても便利だね」というのは時期尚早というものだ。
今でも思い出す、あの寒い日を。
私はその日、翌朝一番の飛行機でNYから日本に帰る予定だった。そこで「朝一に起きるくらいなら前日から空港に行こう」と、NYのホテルを出たのが深夜2時。
「24時間稼働なら大丈夫だろう」と地下鉄に入り電車を待つ。ホームには誰ひとりいない。ただ薄暗い電球が光っているだけ。NYの凍てつくような風がホームにも入ってくる。
待てども待てども電車はこない。いつ電車がくるかわからないということがどれだけストレスフルなことか。日本に住んでいると時刻表があるから、このストレスはなかなかわからない。
そして、待つこと2時間!
やっと電車がくる。これなら「歩いていった方が早いじゃないか」とさえも思ったものだ。
だから、簡単に「NYの電車は24時間でいいね」とは言ってはいけない。
何より「終電を逃したから、泊まっていこうかな」という言葉も使えなくなるし。