寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

電車内コミュニケーション秩序維持官

俺は「電車内コミュニケーション秩序維持官」。こっそり電車内でメールをしているやつのメールを覗き込み、公序良俗に反するメールをやりとりしていないかチェックするのだ。

たとえば、写メで女性を撮っていたり、不倫のLINEをやりとりしていたり、人をバカにする投稿を2ちゃんねるにしていないかをチェックする。そうして電車内の秩序を守るのだ。

しかし、電車の中のLINEやメールをこっそり覗くのは楽しい。特に返信を考えている様を見るのは楽しい。

たとえば、昨日は、ある女子高生が同級生の男の子から、「今度、映画いこうよ」というLINEを受け取った。それに対して、電車内で20分じっくり考えて、「わかった」という一言だけを送った。「なんの映画」という言葉や「そうね」という言葉、「いこういこう!」という言葉を書いては消し、書いては消し、そして、最後にのこった「わかった」という一言を送った。相手の男の子は、その一言の重みを知っているのか。

また、ある時は40歳を超えたおじさんがLINEを見ている。子供とやりとりをしているようだ。「ねむいからさきにねるね」とひらがなばかりで書かれたLINE。きっと息子。小学生なのだろう。父親はそれの返信を考える。「おそくなってごめんね」と書いたり「おやすみ」と書いたり。10分ほど悩んで、結局、おじさんはそのLINEを返さずに終わった。きっとLINEを送ると子供を起こしてしまうと思ったのだろう。ときには返信をしないことが温かみを持つことだってあるのだ。

あるいは、あるOL。20歳くらいだろうか。男からのLINE。ただ、OLは既読にしないように、メッセージの最初だけを見る。既読にせずその50文字くらいを眺める。そこにはこう文字が見える。「ありがとう。あれからじっくりと考えました。言ってくれた言葉はとても嬉しかっ....」女性は、その文章を見て、泣いてしまわないように最後までは見ない。きっと家に帰って部屋にこもって、覚悟ができてから読むのだろう。

こういうやり取りを見て思った。

- 人は文章を打っている時間よりも考えている時間の方がずっと長いんだ

って。

会話だと、そんなに考えない。テンポが悪くなるから。でも、LINEやメールだと考える。じっくりじっくり考える。

そう考えると、LINEのやり取りを冷ややかなやりとりだという人もいるけれど、別の見方をすれば、とっても暖かい珠玉のやり取りなんじゃないかな、と思うのだ