雨の日
雨の日だった。
雨の日に、白のジーンズをはいている男性がいた。
その日は雨だから、足元が汚れる。白いジーンはなおさら汚れる。
それでも、彼は白いジーンズをはいていた。
わざわざ今日履かなくとも、と思うけれど、きっと彼なりのポリシーか、理由があるのだろう。
雨の日に白いジーンズをはく男だった。
また、その日も雨だった。
スールでびしょぬれになって歩いている女性がいた。メイクも心なしか少し滲む。
朝は決まっていただろうウェーブのかかった髪の毛もべっとりと雨に濡れる。
スーツが痛むのに、と思った。傘をかえばいいのに、と思った。
でも彼女は、土砂降りの中、スーツで歩きたい気分だったのだ。
それはなんだか分かる気がする。
雨の日は、人々の覚悟が見え隠れする。雨は、建前を洗い流してくれる。