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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

アフリカの旅行者ノート

アフリカを旅行していると「旅行者ノート」というものがある。日本人がよく泊まる宿においてあるノートで、そこに旅行者たちが情報を書き残している。

ビザの情報や美味しいレストランの情報、あるいは、電車やバスの情報など。ビザの情報などはインターネットの情報よりも生の情報の方が役に立つ。それにアフリカでは、食べログもないから、美味しいレストランの情報もわからない。だから、アフリカの旅行者たちの貴重な情報源となっている。何より何より読んでいて面白い。

西海岸のマリの首都であるバマコでは、宿ではなく大使館に旅行者ノートが置かれている。旅行者たちは大使館にいったついでに情報を書くのだ。

ある時、ある男が大使館を訪れた。そのノートを眺めていると、つい数日前に書かれた書き込みがあった。美味しい中華料理屋の書き込みで、それが気になった男はその店を訪れることにした。

同時に彼は、自分が気に入ったフランスパンの美味しいパン屋の情報を書いていた。

ノートで教えてもらったレストランは少し高かったが、とても美味しかった。そもそも米を食べるのが久しぶりだったのだ。

翌日、彼はまたも大使館に向かった。アフリカですることなんてそんなにないのだ。

そこでノートで見かけたレストランの情報に追記をしておいた。「このお店は麻婆豆腐は辛いので注意。でも値段は安くて200円」と。

そして、ノートの自分が書き込んだパン屋の情報にも追記があるのを見かけた。「チーズパンも美味しかったです」と。

うれしい。自分の情報が人の役に立つというのはこんなにうれしいことなのだ。

そして、彼はさらに情報を書き足した。すると、もう1人の方もいろんな情報を書き足した。その書き込み者の名前はミチといった。

もはや2人の交換日記のようなやりとりが10日ほど続いた。インターネットカフェの情報やバスの情報などが書き込まれた。

そんなある日、彼はついにミチと出会った。最初に訪れた麻婆豆腐が辛い中華料理屋にいくと、その人がいたのだ。

彼は思わず話しかけた。「旅行者ノートに書き込みをしているミチさんですか」と。

なんせバマコには日本人はそんなにいない。案の定、その人はミチさんだった。

バマコで暇をしていた2人。時間は無限にある。

2人は、生姜ジュースを飲みながらたくさんのことを話した。

旅行してきた国、境遇、好きな中華料理、アフリカでのマラリア対策、などなど。

そして、必然的に恋に落ちた。そりゃ、同じバックパッカーで、同じようにアフリカの僻地を旅をしている2人だから趣味も近い。それは恋にも落ちる。

そして、2人は結婚をした。

しかしながら、3年後、分かれることになった。

理由は、お互いが自由に旅行に行き過ぎるからだ。数ヶ月も1人で旅に出てしまう。お互いがそれをするから、すれ違いばかり。でも2人は旅行が好きだからやめられない。

旅行好きだから恋に落ちて、旅行好きだから恋が終わる。

その恋愛の話を聞いたある旅行者はバマコの旅行人ノートに「旅先で出会った人とは恋に落ちるな」という箴言を書いたとさ。