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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

バディ

道を歩いていると、女の子が歩いていた。母親と2人で。

女の子は大きめのぬいぐるみを持っていた。自分の身体の1/3くらいのぬいぐるみ。うさぎだろう。

それを大事に持ちながらてくてくと歩く。母親の歩くスピードに負けないように。

少しぬいぐるみを道にすりながら。

「君はバディがいていいな」と思った。

バディ。スキューバでは、2人1組で潜ることが多い。何かあった時に助け合うためにだ。その相棒のことをバディと言う。

子供の頃はそうしてバディがいた。

ぬいぐるみや犬だったりするだろう。あるいは、何かを擬人化してバディにしていた。ガンダムキン消しに名前を付けて友達にしていた。そうして僕たちはバディを作り出し、バディに話しかけ、僕たちは大人になった。

でも大人になるにつれ、1人で生きていかなければいけない。ぬいぐるみと一緒に生きることはできない。

だから人は恋愛をしたくなるし、あるいは結婚をするのだろう。子供の頃にいたバディを探すために。

英語で奥さんのことを「better half」と表現する。「自分の半分。そして、半分のうちのより良い方」という表現だ。なんとも素敵な表現で。やっぱり僕たちは自分の半分を探している。絵本「ぼくを探しに」で、欠片を探す彼のように。

「結婚で自分にピッタリの人が見つかったら、その喪失感はなくなるのかな」と君は問う。

もしベターハーフが見つかるならばそうだろう。ただ、世の中はそんなに簡単にできていない。「バディだと思ったらそうじゃなかった」と思うことの方が多い。なぜなら世界には60億人の人がいる。その中からバディを見つけるのは簡単じゃない。まるでそれはタイタニック号と一緒に沈んだ秘宝を探しだすようなもので。

ただ、そんな時は僕らには布団がある。世界に誇る布団がある。それを抱きしめて眠ればいい。子供の頃のバディと同じように「よしよし」と言ってくれるだろう。そして、また翌朝、僕達はバディと別れ、旅に出る。1人で暗い海にダイブする。今日もあなたも深くに潜る。

こうして僕らはずっと探している。

話かける相手を。そして、横にいてくれるバディを。そして、自分が横にいたい相手を。

 「モゴモゴ言ってないで、水とってきて」と君は言う。僕はベッドから降りて、いそいそと台所にダイブする。