返ってこないLINE
送らなければよかったかな、と反省した。
春の陽気に誘われてつい送ってしまった。LINEに取り消し機能があればいいのに。
既読の文字が肉肉しい。
「久しぶり。今度、飲まない?」
2年前の彼女に送った未練がましいメール。もう少し丁寧な送り方もあったと思う。いきなり飲みに誘わず、まずは挨拶に留めるとか。
でももう送ったものはしょうがない。ひたすら後悔をするだけだ。忘れるようにしよう。
今日もコンビニで行列に並びながら、つい返ってこないLINEをチェックする。ノンシュガーのコーヒーをレジに通す。
お金を払う。
あ、と気づく。今日は「ポイントカードをお持ちですか」の質問がない。
1年以上、毎日通って、ようやく僕へのポイントカードの確認を諦めてくれたのだろうか。「僕を理解してくれたんだ」という謎の感慨を抱く。
「聞かないことによるコミュニケーション」ってあるんだ。
そして、コーヒーを飲みながら考える。
「返信をしないコミュニケーション」もあるんだよな、と。彼女は無視をしたいわけじゃない。ただ「いきたくない」という冷たい返信もしたくないし、「忙しくて」みたいな嘘をつける子でもない。返信をしないというのが、彼女なりの誠実な返信なのかもしれない。
とはいえ、スタンプくらい返してくれたっていいのに。コンビニの店員の「ありがとうございました」と業務的な返信みたいなやつでもいいから。なんなら片言だっていい。
なんなら誤送信だっていいのに。