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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

ユリという女

ユリと言った。素敵な名前だな、と思った。清純そうなその子にぴったりだった。

実際に彼女はお嬢様だった。百合の象徴である「純潔」を表すかのように、清く美しく育てられた。聖母マリアの花が百合というのも納得だ。

僕は彼女に一目惚れをして1年かかって、恋人同士になった。恋人同士になっても手を繋ぐまで3回のデートをして、キスは、さらにその1ヶ月後だった。

それから1年交際して、僕たちは結婚することになった。

ユリは多くの人から好かれたから、僕はいつも嫉妬していた。まるで百合の花の匂いのようにユリは魅力を辺りに撒き散らかした。

でも、僕は百合は浮気はしないと信じていた。百合の花言葉に「あなたは偽れない」というものがある。その言葉通り、ユリはなんでも正直に話をしてくれた。人に悪意をもってしまった話や性の話、失敗談でさえも恥ずかしそうに丁寧に話をしてくれた。

だから、彼女が夜に飲みに出歩いても信じておくことができた。百合の花も密閉した空間よりはオープンなスペースで育てた方がいいらしい。僕は百合の花の育て方のその記述をみて思わず笑ったものだ。

最初の3年は仲良く暮らしていた。しかし、結婚してから5年で、僕たちは破局することになった。

ユリは言う。「好きな人ができた」

「あなたは偽れない」という言葉はいい意味だけじゃない。本当ならば、自分をごまかしてやっていくべきところも、ユリは、うまくごまかせなかった。世の中の仮面夫婦のように、ユリは自分の心に嘘をつくことはできなかった。

僕は何度も説得しようとしたけれど、彼女は聞き入れなかった。結局、1年の議論を重ねて離婚をした。

それから3年経ったけれど、まるで百合の強い花粉のように、僕の心にこびりついたまま、ユリの記憶は僕から落ちてくれない。

一輪の白い花は死者に捧げる花を意味するらしい。

1人になったユリは、誰かを弔うのだろうか。どうせなら、自分に捧げられたいな。

そうして、僕は楽園から飛んだ。