寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

そんなつまらないこと

飲みにいこう、と言ったら彼は驚いた顔をしていた。

そして少し間があいて「ぜひ」と笑顔で返ってきた

いつもは彼からのお誘いばかりで、私から飲みに誘うなんて初めてだから、驚くのも当然かもしれない。仕事の打ち合わせは私からいつも予定を入れるけれど、プライベートで私から予定を入れるのははじめてだ。

当日になって、会社の最寄り駅から2つ離れた駅で待ち合わせをする。わざわざ最寄りを避けるまでもなかったのだけれど、なんとなく男女2人で会うところは会社の人たちに見られなくなかった。

いつもは襟の付いた服なんて着ない彼がピシッとシャツを来ている。

そして、私がよく行くビストロで食事をする。いつも通り、仕事の会話、少しの愚痴。そして、いつも通りの、いつまでも恋人ができない彼の恋愛事情を笑う。

デザートを頼む頃、私は切り出す。

「実は会社を来月で辞めるんだ」

会社で仕事以外で親しくしていたのは彼くらいだったから、彼には先に報告をしておきたかった。私が困っていた時に助けてくれていたのは彼だった。

それを聞いて彼はこういう。

「そんなつまらないことをいうために、僕を誘ったんですか」

真正面から覗かれたその目がとてもきれいで。

私は、思わず「今日は部屋、きれいだったかな」と考え始める。