二軒目の前に
その日は会社の交流会だった。
10周年記念のパーティでホテルの会場を借りてのセレモニーだった。
帰り道、飲み足りない僕は同僚に連絡する。2人とも帰る方向が近いので、たまに一緒に帰ることはあったのだけれど、飲むのは初めてだった。
「どこにいる?飲まない?」
「いいね。いこう」
2人の最寄り駅で待ち合わせをする。
「着いた。ちょっと待って」と彼女からLINEが届いたのは22時。
それから10分経っても彼女は現れない。
どうしたのかな、と思った頃に彼女があらわれる。
僕は彼女が時間がかかった理由を理解する。きれいに塗られた口紅と整えられた髪型がそれを物語っていた。
僕は行こうとしていた店をいつもの居酒屋から、ここぞという時のバーに切り替えて、一歩目をあるき出した。