寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

夜の匂い

夜0時。仕事帰り。たまたま空いていたホームのベンチに座る。

ベンチに座る大人になっちゃったな、なんてことを思いながらベンチに座る。携帯をいじる。Twitterを見ていると、隣の席に女性が座る。

そして、しばらくすると、女性が、シュっと、何かの音を立てた。

えっ、と思い、そちらを見る。香水を自分の服の中にかけている。シュッ、シュッ。

マナーのある大人だから、顔は見ないけれど、甘い香りが漂ってくる。女性は香水をかけおわると、鏡を出して眉を塗り始めた。

ある鉄道会社が「電車内で化粧をしないで」といったメッセージを打ち出していた。でも、夜23時の繁華街では許してあげてもいいんじゃないか。

彼女はこれから彼氏のところにいくのだろう。あるいは、クラブに行くのだろう。

それはまさにこれから戦場に向かう侍のようで。

侍が、戦場に向かう前夜の験担ぎに、打鮑、搗栗、昆布を食べるのを見るようで。

少し応援したくなる。そして、仕事で疲れた私の身体には、その香水の甘い匂いが、カフェモカのような甘みさえも持っていて。

そんな甘い匂いを鼻孔に添えて、僕は待つ。0時を過ぎて走行間隔が長くなった電車をタラタラと。