寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

いつもの金曜日

だいたい仕事は20時に終わる。金曜日は飲みの予定が入ることは多いが、月に1度くらいは予定が入らない金曜日がある。「もったいないな」と思って、予定を入れたくなるけれど、この年になると「何も予定のない金曜日」の方が贅沢だと知ってしまった。「何も予定のない金曜日を謳歌しよう」という気持ちになる。

行きたい店のリストから、今日行きたい店を探す。金の夜の店は気をつけないとカップルだらけの店に1人でいってしまうことになる。そんな時は居心地が悪い上に、カップルに申し訳ない。せっかくの花金の邪魔をすることはない。1人でいってもおかしくない店、ただしラーメンなどではなく、それなりにゆっくり食べれる店を探す。電話をする。金曜日なので2件に1件は予約が一杯だが、1人だと意外と座れることも多い。

特に好きなのはカウンターがメインのビストロだ。あとは、おでん屋やカウンターが人気の和食もいい。今日は並木橋にあるカウンター和食に向かう。この店は、奇数の席なので、2人組ばかりが揃うとちょうど1人だけ余るのだ。「1人ですが予約できますか」と聞くことにしている。店によっては1人はだめなのだ。懐石やフレンチが多い。まぁ、仕方ないだろう。コースものは1人だと時間を持て余してしまう。2人だと何も気にしないのに1人で店に入るのはなんだかドキドキする。ただ、「恥ずかしい」という気持ちは昔になくなった。自分が気にするほど他の人は自分のことを気にしていない。何より、高級フレンチの代名詞であるカンテサンスで1人で食事をする初老の人を見かけて以来、僕も、そういう年のとり方になりたいと考えている。

今日はビールとポテトサラダとコロッケを頼む。この店のポテトサラダは歯ごたえが最高で癖になる。そして、肉を少量を食べて1時間で店を出る。他の客を見ながら、彼らが過ごす金曜日のこれからを想像するのが楽しい。Facebookで友人たちが過ごす金予備に少し嫉妬しながらも、自分のこの一人の時間の芳醇さも「負けてないぞ」と思う。