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寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

選挙の受付

割がいいから、という申し込んだ選挙の投票受付の仕事だった。座っているだけで時給1000円ももらえるのだ。奇跡。

しかし、まだ10時にも関わらず既に後悔し始めてきた。暇なのだ。

人がくる。投票所入場券を受け取り、選挙人名簿と照合する。問題なければ判子を押して返すだけ。返す時に、「◯◯さんですね」と言う。以上だ。猿ではできないかもしれないが、頑張ればイルカならできるかもしれない。イルカは判子が持てないのが問題だが。持てないでいえば、私がモテナイのも問題だが、それはまぁ別の問題だ。

そして、ひたすら確認をする。忙しければ、それはそれで面白いのかもしれない。「何秒で名前を見つけられるか」といった遊び方もできるかもしれない。ただ、思ったより暇だ。田舎町ゆえか、オープン時こそ何人か来たが、そこからはまばらだ。朝1にくるひとは何の目的でくるのだろうか。「投票箱が空ですよね」という1番目の人にだけ許された儀式に興味があるのだろうか。あるいは特定の政治団体は1番乗りをモットーとしているのだろうか。あるいは朝から暇なのかもしれない。日常が暇な人にとって、投票は非日常であり、フェスみたいなのかもしれない。投票用紙を投票する瞬間、彼らの頭の中では、4つ打ちビートを響き、残り2秒の3ポイントシュートを彷彿させているのかもしれない。

しかし、暇だ。

なんならお腹まで減ってきた。一緒に受付をする人がイケメンならまだましだった。あるいは、もはやイルカでもよかった。でも、何の変哲もない草食系男子(推定25歳。顔の偏差値46)。何も起こらない。二酸化炭素が少し濃くなる程度の変化しか起こらない。「よろしくお願いします」以降の話をしていない。

しかし、投票にする人は千差万別でそれを見ているのは楽しい。だいたいが1人か夫婦、少ないが家族連れ。カップルはあまりいない。選挙区が違うからだろう。もし、その人がどこに投票したかわかれば、「顔から、このひとの支持政党を当てましょうゲーム」ができるのに、と思う。なんなら「顔からこのひとの苗字を当てましょうゲーム」でも始めそうない勢いだ。

10分で何人くるかゲームでも始めようか。あるいは今日の晩ごはんを考えようか。暇だ。今のところ「投票所入場券」に書いてある名前が名簿にない人もいない。アクシデントは起こらない。ミッション・インポッシブルみたいに、いきなり銃撃戦が始まらないだろうか。

そんなことを考えていたら、隣の人がトム・クルーズに見えてきた。嘘だった。トム・クルーズと隣の草食系男子は、目と鼻の数しか共通点はなかった。

そうだ。投票にきた人に念を送ろう。そして、私のちからで泡沫政党を1位にしよう。これはどうだ。念ってどうすれば送れるのか。腹に力を入れたらいいのか。それより暇だ。

- なんてことを考えながら投票に行くと、受付の人へのシンパシーが生まれて、選挙に一層の熱が入るものです。