冬の朝
あー寒い。冬は寒いからやだね。早く春にならないかな。
そんな毎年つぶやいているようなセリフを吐く。もし、冬が聞いていたら気分を害するだろう。ごめん、冬。
でも、そんな冬に毒づく僕に代わって彼女は言う。
私は冬も好きだよ、と。
会話が盛り上がるのは、こういった2人の意見が違う時だ。そういう時こそ会話が弾む。犬好きと猫好き、納豆好きと納豆嫌い、朝好きと夜好き。
冬ってさ、空気が澄んでるでしょ。だから好きなの、と君は言う。
冬の鍋や温泉好きというならばわかるけれど、空気が好きだなんて。実際、冬は気温が低いから空気中の水分が減って、光が濁っていないんだって。だから、澄んでるのは本当なんだって。
それに、朝の冬の空気って、ピリっとしてるでしょ。なんだか好きなの。
ワォ。世の中に、冬の空気を愛でる人がいるなんて信じられなかった。紫式部くらいだと思っていた。
そんな冬の空気を愛せれる彼女と一緒にいることができてラッキーだな、と思う。
こんな素敵な彼女が好きな冬なら、僕も冬を好きになれるかもしれないな、と思った。冬の朝は勘弁だけど。