寝る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます

おでんの色気

祝日前とはいえ、仕事が早く終わってくれるというわけではない。ということで、終日前にもかかわらず、仕事で遅い。終電も間近の電車で帰る。電車はご機嫌な酔っぱらいたちもいて満員。羨ましさといらだちを抱きしめながら電車に揺られる。

電車は最寄り駅につく。改札を出て、そして、駅から出ると外気温の低さを感じる。寒いな、と思う。「もう冬かな」と思う。でもマフラーはまだ出さない。寒さが本格的に到来する12月までは待つ。

家までの帰り道のコンビニに寄る。夕ご飯を食べておらずお腹が空いた。松屋に寄るという方法もあったが、祝日前に1人で松屋はむしろ寂しさを助長する。それならばコンビニ飯を家で1人で食べた方がいい。

コンビニに入る。コンビニではおでんがある。「おでんか、いいな」と身体がおでんを欲している。

そしておでんの什器を見に行くと既に客人が。キャメル色のコートを来た女性が、おでんを眺めている。真剣に真剣に。

大根と、そして、がんもどきを取ろうとする。汁が入ったおでんの器を持ちながら、真剣におでんを選ぶ。

なんだか、その所作に色気があって。

なぜ色気があるんだろう、と考えた時に、それが欲に直結しているからではないか、と思った。つまり、おでんの前で「何を食べようか」と選ぶ彼女は、いわば自分の胃袋や脳と対話している。「何を食べたい?私の身体」と。それはすなわち彼女の脳において食欲が締める割合が100%だ。そして、食欲は、性欲と同様に「我」を見せるもので、そこには生々しさがある。そこには飾りも化粧もない。裸の心が見え隠れする。ゆえに、そこには色気がある。

そう考えるとレストランでメニューを真剣に選んでいる女性にも妙な色気があるな、と思った。

男性もおでんの前で「うーんうーん。ちくわにしようか、はんぺんにしようか」と悩んでいたら、色気はでるかな、と考えた。

ないな。

そこに出るのは、独り身の哀愁くらいだろうな。