恵方巻きのノルマ
「コンビニ店員に恵方巻きのノルマ」というニュースを見た。バイトでも「今年は10本予約をとってこい」と言われて、予約が取れないと給料からその分を年引きされてしまうって。
実は私もコンビニ店員なので、そのニュースは他人事ではなかった。「そうそう、うちも!」って。うちは、ニュースで言ってた10本よりも少ないけれど、3本を予約しないといけない。1本300円だから、3本だと900円だ。1時間のバイト代が消えてしまう。
どうしようかなーと思った。憂鬱だ。
1本は自分で食べてもいい。お父さんも食べるだろう。あと2本。もう1本はアキコにお願いできるだろう。このあいだ漫画も貸してあげたし。
あと1本は誰に売ればいいんだろう。
この3日、考えたけれど、思いつかなかった。仲の良い友達は2人しかいない。アキコとアヤだ。でもアヤはお金がないから買ってくれないだろう。
あ、そうだ!ダイスケにあげよう。
ダイスケはいつも靴にお金を使ってお金がないだろうから、私が買ってあげよう。プレゼントだ。
一ヶ月ぶりのLINE。最初はなんて送ればいいかな。「久しぶり!節分だね。恵方巻き食べた?」かな。「バイトで買わされてさ、恵方巻き余ってるんだけどいらない?」って言えば変じゃないよね。
ダイスケ恵方巻き食べるかな。かんぴょう食べれるかな。どんな服を来て渡しにいこうかな。
あ、そうだ!バレンタインもチョコのノルマがあればいいのにな。
風の谷のフンザ
昨日の以下の記事の続き
イスラマバードまでは羽田からカタール航空で向かった。途中でカタールで乗り換えて15時間の旅だ。カタールという響きが既にハワイやバンコクとは一線を画する雰囲気を醸し出している。
イスラマバードには、夜ついたので、そこから宿に泊まる。時差と興奮で眠れないが、とりあえずベッドに潜り込む。なんせ長旅だ。
翌日の朝はやくからからバスに乗る。あまいチャイを飲みながら目を覚ます。バスは、カラコルム・ハイウェイというガードレールのない崖の道をひたすら北上するそうで、転落事故も多い。まぁ、桃源郷を目指すのだからそういうリスクもあるだろう、と思い、気にしないことにする。
しかし、20時間のバス旅は非常に暇である。本を読んでも飽きるし、外の景色もひたすら山だし。仕方なく音楽を聞くがバッテリーもなくなる。寝て、考え事をする。桃源郷を想像して。標高2000メートルの山々をひたすらバスは走り続ける。
「KARIMABAD」という看板に気づいたのは朝だった。「ああ、これがフンザか」と思い、外を見渡すがまだ薄暗い。「あれ、桃源郷なの?」と思い、バスを降りて最初に感じたのは「寒い」という感情だった。
カフェに入り、チャイを飲みながら、朝になるのを待つ。ゆっくりと出て来る朝日。その朝日の光に照らされたフンザは、荘厳だった。青い空に白い峰。その下にはアプリコットとアーモンドの花が咲き乱れている。穏やかで静かな空気がしっとりと流れている。
そんなフンザの空気を吸い込みながら、フンザに2泊、滞在した。
人は穏やかで素朴で暖かい。町は何もないが、自然があり、畑があり、ヤギがいた。朝日があって、夕日があった。楽器を演奏する子どもたちがいて、洗濯を干す女性たちがいた。満点の星空があり、澄み切った空気があった。
ああ、ユートピアというのは、こういうことなのかもしれない、と思った。
人にとって、このような穏やかな風景は、自分のいつかの郷愁を思い起こさせる原風景なのかもしれない。自分の小学校の頃に夢中だった山遊びや子供の頃の夏の日差し、冬の朝の匂いなどがここにはあった。メランコリックでセンチメンタルな匂いだった。
仕事の嫌なことも、人間関係も全部どうでもよくなった。この神々しい風景の前には、そんなことはすべて些細なこととなった。どうして、こんなに空が青いのに請求書1枚でグダグダしなくちゃいけないんだ。
ある時、気づけば、夕日を見ながら涙をしている私がいた。夕日が私の琴線をしっとり照らした。
ユートピアは自分の中にある、なんてベタなことはいいたくない。
ただ、ユートピアとは、語源の「どこにもない場所」ということなんだ。つまり、自分が過ぎてきた過去。忘れてきた昔が、自分のユートピアなんだ。もう今はない。決して戻れない場所。それがユートピアなんだ。
それに気づかせてくれたのが、このフンザの風景であり空気であり、匂いだった。
もう戻れないけれど、戻れなくなった風景を思い出させてくれるのがフンザだった。
ユートピア
この世の中に「ユートピア」ってあるのか、と思った。サウナの名前ではなく、「楽園」という意味のユートピアだ。
楽園でもエルドラドでも呼び名はなんでもいい。ザナドゥでも、理想郷でもいい。
昔、コロンブスが目指した新天地。あるいは、お釈迦様が目指した天竺のような、何か新しい世界を見せてくれる場所は、現代はどこかにあるんだろうか?
現代は、どこかに行きたくなければ飛行機でひょいっといける。インターネットで情報や写真も見ることができる。もうユートピアは残っていないんじゃないか。マイケル・ジャクソンのネバーランド以外は。
そんな思いを抱いたのは、いろんなユートピアと思われるところに行ってきたからだ。
沖縄の石垣島では青い空を見て「楽園ぽさ」は感じたが、ユートピアではなかった。10万円以上の風俗はユートピア感を感じたが、刹那であった。恵比寿の高級フレンチロブションも建物からしてユートピア感は溢れていたが、とはいえ、フレンチの域を超えなかった。酒池肉林の世界観ではなかった。ディズニーランドにいたってはユートピアというよりもポートピアだった。
そんなユートピア探しを数年していると、ある情報を耳にした。パキスタンにあるフンザという町だ。
それは「風の谷のナウシカ」にでてくる風の谷にも似た場所だという。桃も咲いていることから桃源郷とも呼ばれているそうだ。その形容だけで心惹かれるではないか。なんとそれはいきたい、と僕は早速バックパックを背負った。会社には3日の有休をとって、3連休にぶつけ6日の旅だ。
というのも、フンザまでは時間がかかる。フンザはまず首都のイスラマバードに行く必要がある。そこからトラックだ。カラコルム・ハイウェイと旅行情緒溢れる名前の道を通り、一泊をかけて、カリマバードという町に着く。そのカリマバードがフンザの中心の町らしい。
あるいは中国から入ることもできるそうで、クンジュラブ峠からも入れるそうだ。ただ冬は入れないため、短い間しか通れない。しかしそれは時間もかかるし、何より寒そうだ。陸路で行くことにしよう。
さすがのユートピアらしく、場所は遠い。しかし、それでこそユートピア感が出るというものだ。
続く
ディズニーの行列が嬉しくなる魔法
「ディズニーってさ、たまに行くと楽しいけど、でも並ぶのが嫌だよね」
「わかる。行列は辛いよね。特に夏だと。
じゃあ、いいことを教えてやろう。ディズニーの行列が嬉しくなる魔法だ」
「どういうこと?」
「この魔法をかけると『わぁ行列だー。うれしい。もっと並べ―』と思うようになる」
「教えて教えて」
「株を買え。オリエンタルランドの。オリエンタルランドはディズニーの日本の運営会社だ。
すると、お前にとってはディズニーが儲かることが嬉しくなる。ディズニーが儲かると株価があがるから、お前のもってる株も値上がりするということだからだ。
つまり、行列も嬉しくなる。行列ができるということは、売上が増えそうだからだ。
そういうことで、もしディズニーの行列が嫌で、それでもディズニーにいかなくてはいけない時は、オリエンタルランドの株を買ってから行くといい。」
「資本主義的な魔法だな。ディズニーランドとは正反対の」
ヨーグルト
なんだよ、とつぶやいている自分に気づいた。
悔しいので、久しぶりに湯船に湯を入れた。普段はシャワーだけれど、今日は湯船に浸かりたい。
湯が満杯になるのを待ちきれず湯船に飛び込んだ。そして、水の中に潜った。
ドボドボとお湯が入る音が流れる。べちょんと湯船の底に背中をつけて、足を空中に投げ出した。
しばらく水の中で呼吸を止める。デトックス、デトックスと思う。そして、ざばーっと湯船から顔を出し、酸素を吸う。うまい。
なんでヨーグルトなんだよ、と思った。
昨日、自分に別れを告げた女性のことを思い返していた。
「ヨーグルト食べようかな、と言いながら冷蔵庫を空ける背中が寂しそうで」というのが彼女の理由だった。
その背中に惹かれて、彼女は彼のところに去っていった。俺より20歳も年上でバツイチのおっさんのところに。
なんでヨーグルトなんだよ、と思った。ヨーグルトくらい俺も食べるよ。なんで俺のヨーグルトを食べてる背中じゃ駄目なんだよ。
もうしばらくヨーグルトは食べられないじゃないか。
なんでなんだよ、と言いながら、シャワーのお湯を浴び続けた。
鼻セレブ
嗚呼、鼻セレブを買ってしまいました。ちょっと風邪気味で鼻水が止まらなかったのです。
鼻セレブをご存知ない?それは、ちょっと大正すぎます。いま、セレブの最先端は、ジェット機でもなく別荘でもなくティッシュなのです。
ティッシュに金粉とトリュフが入っているのざます。嘘ですけど。
↑ 日本が誇る鼻セレブ
手触りならぬ鼻ざわりが最高で、「あーセレブは毎日、こんなティッシュで鼻をかんでいるのか」と嫉妬してしまいます。
貧民の私は、このティッシュは高価すぎて使えません。日常は普通のネピアだかネスレのティッシュで、いざという時だけ、この鼻セレブを1枚とって使います。おっと、虚勢をはってしまいました。実際は、1枚を半分にして使います。
いざという時はどんな時か?それはもう決まってるでしょう。風邪や花粉症で鼻をかみすぎて、鼻がやんごとないことになっている時でしょうね。そして、乙女の涙を拭う時だけなのです。
鼻セレブを使う時は、せっかくなので環境も最高にしておきたいです。クラシックをかけて、生活の木のアロマを炊きます。照明を消して、体調を整えて、そして、右手でクラシックを踊るかのように鼻をかむのです。それはもう荘厳な音を奏でながら鼻をかめることでしょう。
名前も鼻セレブなんて表現はまだ弱いです。できれば、鼻プリンスとか、鼻常任理事国とか、そういうのになってほしいです。
私にとって鼻セレブは、もう家宝にも近い位置付けで、なんなら玄関に飾ろうかとも思っています。鼻セレブがふかふかすぎて、これ1枚で布団がわりになるかもしれませんね。あるいは、ふかふかなので、エアーバックの代わりになるかもしれません。1階に一台、鼻セレブですね。
さて、こんな阿呆なことを言っている自分に泣けてくるので、その涙を鼻セレブで拭ってもらうことにしよう。
地名で遊ぶ
最初に東横線沿いに住んだ時にさ、全部の駅名を覚えようと思ったんだよ。英単語覚えるみたいに覚えたんだよ。でも2年も経つと全部忘れちゃった。駄目だね。
やっぱり町はイメージと結びつけて覚えなくちゃいけないよね。渋谷は坂が多いから「渋谷」みたいにさ。実際に谷だったから「渋谷」って名付けられたんだろうけど。あと恵比寿がエビスビールの工場があったからとかも覚えやすいよね。いまでも恵比寿ビールの見学できるところあるもんね。
でも、よくわからないのも多いよね。三宿って。宿が3つあったんだろうか。さらに、隣に三軒茶屋ってあるじゃない。じゃあ隣にカフェが3軒あったんだろうか。混乱するよね。4つでもいいし、なんならパン屋でもいいじゃないかって。
あと三宿と新宿だったらどっちが強いかも悩ましいよね。新しい方が強いのか、3つあるのが悩ましいのか。目黒と中目黒も悩ましいよね。目黒の方が端的で強そうだけど、中目黒の3文字シンメトリーの字面は大三元の風格があるよね。
それでいえば、武蔵対決も気になる。武蔵小金井と武蔵小杉、武蔵小山。どこが一番強いか。最近の再開発で考えるとやっぱり武蔵小杉かな。あと、白金と白金台、白金高輪とか、麻布十番、西麻布、南麻布、麻布台、東麻布とか、ああいうのは名前をまとめてナンバリングにして欲しいよね。西麻布は麻布九番でいいじゃない。覚えられないよ。
そういえば、ロサンゼルスって、スペイン語で「天使たち」っていうんだってね。日本でいえば九品仏って感じかね。ラスベガスは草原っていう意味だって。日本なら大森かな。大森はラスベガス感ないけどね。
かっこよさでいえば、先日インターネットで『英語にするとかっこいい地名』というのも見かけたよ。2位が静岡(サイレントヒル) で1位が新潟(エターナルフォースブリザード)だって。いや、2位はわかるけど、1はおかしいでしょ。せめて「ニューラグーン」でしょ。一気に昭和の観光地のさびれたホテルみたいになったけど。
1位で思い出したけど、1番〜10番の数字で地名をピックアップしたことがあったな。
青山一丁目、二子玉川、三軒茶屋、四谷、五反田、六本木、八王子、九段下、麻布十番。7はなんだっけな。あと青山一丁目はなんかずるい気もするな。
あ、やべ。降りる駅を乗り過ごしちゃった。電車に乗ると路線図ばっかり見ちゃうんだよね。7をつく地名を考えながら、乗り換えようっと。