眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

ルイボスティ

起きて「ここはどこだ」と思った。ああ、繁華街のラブホテルだ、と気づく。

クラブで出会った女の子とそのまま駆け込んだラブホテル。2軒が一杯で3軒目にようやく空いていた。少し高かったけど。

そして、気づけば、今だった。朝だった。僕と隣で寝ている彼女は裸で寝ていて。

僕は布団からのっそりと起きて、酒が残る胃にムカムカして。水を飲みたいけど、ラブホの水は200円もするので、なんだか悔しい。

しかたなく、備えつけの安いインスタントコーヒーを僕はあける。水を沸かす。

そして顔を洗っていると、女の子も起きたようで。

「コーヒー飲む?」と聞いたら「いらない」と言われた。

ああ、コーヒーを飲めないのか、と理解した。代わりに水をあげた。200円のエビアンを。

数日後、彼女と食事をする機会があった。

食後に、「紅茶を飲む?」と聞いたら「いらない」と言った。コーヒーも飲めなくて、紅茶も飲めないのか、と思った。

「カフェインが飲めないの」と彼女は言う。

「それを知った友達がね、このあいだ、ルイボスティーをくれたの。ルイボスティーはカフェインが入ってないの。優しいでしょ」

と彼女はまくし立てた。僕は「コーヒー飲みたいな」と思いながら、うんうん、とうなずいた。

そして、こっそり携帯でルイボスを調べる。

ケープタウンの北にしか自生しないとか。いったこともない南アフリカ共和国の山間のルイボスを想像してみた。

二日酔いには効かなさそうな葉っぱだな、と思った。なんとなく。

でも「ルイボスティはカフェインが入ってない」という情報は覚えておこう。いつか、なんかのクイズで出るかもしれないし。

なんのクイズだよ、と自分で突っ込んだ。彼女は優しい友達の話を続けている。僕は「コーヒー飲みたいな」と思っている。