眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

自分に贈りたいものって実は...。

今週のお題「自分に贈りたいもの」

ーなんで...。昨日まであったのに

帰り道に寄った恵比寿アトレで私は立ち尽くす。

自分のご褒美として買おうと思っていた、kate spadeの長財布。ハートのモチーフと色合いがとても好きで一目惚れしてしまった。

でも、私がすぐに買える値段でもなかった。だから、TOEIC800をとったら買おうと思っていた。それが今日だったのに。2週間前まではあったのに。

店員さんに在庫を聞いてみたが、もうないらしい...。

英語勉強をあれだけ頑張ったのもバカらしく思えてきた。そもそも、TOEIC800を目指したのに、理由なんてあまりなかった。会社が必要としているわけでもなかった。いつか英語を使う仕事をしてみたいと思って目指した点数だった。

当面、仕事で英語を使う機会なんてないけれど、いつかそういう機会があればいいなって。でも、ご褒美を買えなくて、そのTOEIC800自体が無駄な努力だったように思えてきた。

ーそうだ

メルカリを探す。ここにあるかも。

1つだけあった。探していた財布を見つけた。ほぼ新品で定価よりも5000円安い。

ーやった

同時に、少し不思議な感情を感じる。人がいらないといっている物を買うことに。この人はこれをいらないんだ。私は、それを本当に欲しいんだっけ。

私はメルカリで、その商品画像を見ながら、ぼーっと考える。その商品には、他にも12の「いいね」がついていた。そして、5件のコメントがついていた。「値下げしてくれませんか」とかとか。

それを見て、また不思議な気持ちがでてきた。

この人はいらない財布だけど、私も含めて、まだ欲しい人がいる。

ーあたりまえだけど、そうだよな..。

みなはみな、同じ感性じゃないし、そして気持ちも変わる。人がいらなくなったからって、その物の魅力が落ちるわけではない。その物が不要になるタイミングが人によってそれぞれ違うだけだ。

高校のバイトの先輩から、服をもらった時に、「うれしい」と思ったように。お兄ちゃんから、使わなくなったIpodをもらった時のように。上の人たちはいつかそれをいらなくなって、次の人にわたす。

恋愛だってそうだ。恋をして、その人が前の恋人に振られたからって、私は「他の人がいらなかったものはいらない」とは思わない。めぐり合わせなんだ。

私も、今は必要かもしれないけど、将来、いらなくなるかもしれない。自分は人これを買って、そして、いつかこれを欲しい人に売るかもしれない。

私のTOIEC800もそうかもしれない。今は、誰も必要とされていないかもしれない。

でも、いつかこれを必要とする人がでてくるかもしれない。そういう時は、喜んで、この小さな英語能力を差し出そうと思った。

ー結局、自分に贈りたいものって、いつか他の人に贈るくらいがいいのかもしれない。

 

私はメルカリで「購入」ボタンを押す。今度は売り切れないように。