眠る前に読む小話

寝る前に1分ほどで読める小話です(フィクションとノンフィクションまぜこぜです。最近テクノロジーをテーマにしたものに凝ってます)。読者になっていただけると欣喜雀躍喜びます あとスターも励みになります!

Airtagで偶然の再会を装って

 

 

AppleのAirtagを知ってるか。

それをつけているとその位置がわかるというものだ。基本は、自分のカバンやペットにつける。そうすれば無くした時に、iPhoneからその場所がわかる。子供にもたせておいてもいいかもだ。

でも、これを悪用するやつもいる。そう、俺のように。

気になる女性のカバンにこれを入れておけば、彼女がどこにいるか俺には手に取るようにわかる。あとは、レストランやカフェで偶然会ったフリをする。

「わぁ、偶然だね。ここで何をしてるの」

そうして2回も偶然を装い会えば、その人は、俺のことが気になる。人は運命の出会いを好むから。

今日も、美佐子を追いかけている。幸いなことに彼女は、iPhoneではなくandroidだ。iPhoneだったら、「あなたのものじゃないAirtagがあなたと一緒に動いていますよ」という警告を出すからな。だが、androidだったら、いくら俺が彼女の後を追っていてもばれないんだ。

そんなこんなで、美佐子が入ったバーに20分遅れで入る。すぐに入ると怪しまれるからな。しかし、こんな会社から離れたカフェに、なぜ美佐子が...。

バーに入ると、そこは20人くらいの小さな箱だった。俺は美佐子を探さない。目の奥では部屋のテーブルの端に座る美佐子を目で捉えている。ただ、美佐子は男と喋っていて気づかない。

ー誰だ、あの男は。

入った時は1人だったのに。待ち合わせだったのか..。許せない。邪魔をしてやる。

俺は美佐子から離れたカウンターに1人で座り、携帯を眺める。そしてトイレに行く時に、気づいたフリをする。

「ああ、美佐子じゃないか。こんなところで合うなんて久しぶり」

「ああ、高木さん、こんにちは」

「これも偶然だね。もしよかったら少しとなりに座っていい?」

美佐子は少し間をおいて、「どうぞ」という。

男はぎこちない笑みで、「こんにちは」という。

誰だ、この男は。話を聞くと、美佐子のもとの会社の同僚らしい。ただ待ち合わせしたのではなく、偶然出会ったそうだ。彼氏でもなければ気にすることはない。

そして、1時間も飲んだころ、男が「そろそろ帰ろうかな」という。美佐子も「じゃあ私も」という。であれば、俺も帰る。男と美佐子の距離が近い。この2人を一緒に帰らせるのは危険だ。

お会計をして外に出る。駅までは少し歩く。

すると、男のiPhoneから警告音が聞こえる。男はiPhoneを取り出して画面を見る。「Airtagがついてるって」と男が、不思議そうな顔で自分のiPhoneを見る。

ーまずい

美佐子につけたAirtagは、男のiPhoneに反応している。まさか美佐子と一緒に異動する人の携帯に反応するとは想定していなかった。

美佐子は立ち止まる。男は美佐子と俺の顔を見ている。

俺は冷や汗が背中に流れるのを感じる。

ーやばい、逃げるか。美佐子のカバンからairtagが出てきたら、怪しまれるのは俺だ。

その時だった。

「ごめんなさい。それ私が入れたの」

美佐子が言い出した。

「え?」

男がいう。俺ももちろんいう。

美佐子が男のカバンを開けて、ゴソゴソとすると、そこにAirtagが出てきた

ーえ

俺はこころの中で叫ぶ。どうして、男のカバンにairtagが。俺が入れたのは、美佐子のカバンだ...。

「あなたのことが好きで、後をおいかけたくて、このAirtagをあなたのカバンに入れておいたの。さっきバーで出会ったのも偶然じゃないの。私があなたの場所をこっそりおいかけて、わざと偶然を装って出会ったの」

男は少し黙る。

「こんな偶然なんてなくてもよかったのに」

男は美佐子を抱きしめる。俺は、2人を残してタクシーに乗る。

タクシーの中で、携帯から、美佐子のカバンに入れたAirtagは消す。男の家の場所なんて知りたくないから。

インスパイアもと

>AirTagを知らずに取り付けられた場合、ユーザーに警告が発せられることが判明 - iPhone Mania